GW期間中は4/28 5/1 5/2のみ診療します。再診の方のみです。
受診中(受診検討中を含む)の方で、妊娠・出産・授乳を検討されている方に向けた情報提供ページです。
結婚や子どもを持つことに関してのスタンス、ジェンダー自認など、色々あるとは思いますが、「生物学的に生殖活動が可能と思われる年齢」の女性には、基本的には一律でお目通しいただくようにお願いしています。合わせてそうした可能性のある方のパートナーの方にもお読みいただきたいです。
精神科の薬は「脂溶性」(油に溶ける性質)のものが多いです。脳に到達するまでには「血液脳関門」という細胞膜で作られた壁を通り抜けないと、脳内に到達することができないため、こうしたものが多いとされているようですが、同様に胎盤を通過して胎児に移行する可能性が否定できず、胎児に影響がある場合があります。物によっては明らかに催奇形性のある薬もあります。
薬の種類によります。
催奇形性のあるもの:「器官形成期」というタイミング(一般に受精後2〜8週間を指します)での、薬への暴露が奇形を起こすことがあります。
鎮静作用のあるもの:妊娠間際に内服すると、胎児に移行して、胎児にも鎮静作用が出現することがあります。一過性に呼吸の低下などがみられるとされます。
このタイミングが相対的に危険度が高いと考えられますが、いずれも絶対の安全はありません。特に脳神経や脊髄などは妊娠全期間に渡って成長するとされています。
網羅的ではありませんが、催奇形性が注意されているものとして、明らかに添付文書に記載されているものは
炭酸リチウム(商品名リーマス):Ebstein奇形という心奇形のリスクが高まることが知られています。
バルプロ酸ナトリウム(商品名デパケン):二分脊椎症のリスクが高まることが知られています。重症例では下半身が動かず、車椅子の生活となります。
いずれも当科的には「双極性障害」(躁うつ病)の治療薬として使われます。同疾患は比較的若年、結婚適齢期の女性に発症することも多いため、問題となることがあります。
また、鎮静作用があるとされるのは、メジャー・マイナートランキライザーです。統合失調症の薬や、抗不安薬などです。こちらも若年者に投与されることがあります。
上記に挙げた以外の薬も「100%催奇形性がない」ということは否定できません。例えば、COVID-19に対するmRNAワクチンなどは、人間に対して使われる歴史が浅い薬です。嗜好品、食品添加物、残留農薬なども影響は否定できません。胎児はこれら薬剤以外にも、先天性の感染症、遺伝子異常など、さまざまな理由で先天性障害を発症することがあります。携帯電話の電波が精子形成に悪影響とする説もあります。
本質的に「そうした目的での治験が出来ない」という理由だと思います。使用した結果、こうした不都合があった、という報告ベースになってしまいます。催奇形性があるかどうか、わからない薬を大規模に投薬・検証することは、医療倫理的に認められないと考えられます。
先天性の障害は赤ちゃんの一生に、ずっと残る影響を与えます。また、出産直後が健康であったとしても、例えば発達障害は数年経過しないとわかりません。そんなときに「あのとき、薬を飲んでいたせいではないのか」と、後悔してほしくないというのが正直なところです。
そのため当院としては、基本的に「妊娠中は一切、薬を使わないほうが良い」というスタンスで行っています。
一方で、妊娠・出産を企図して薬を切ったために体調を崩してしまう、という方の経験もあります。基本的にはリスクとベネフィットを説明の上、相談して使用するか、しないかを決めるという方式になります。
薬の半減期にもよりますが、長期に内服する薬(抗うつ薬など)は、ある程度蓄積して効果を発揮します。月単位で内服をお休みしている期間を開けることで、体内からの排泄が促され、リスクは下がると考えられますが、「これだけ開ければ絶対安全」とは言い切れません。
比較的に、古く使用経験の多い薬ほど、「絶対安全」とまではいえないながらも、「明らかな奇形率の増加、先天性障害の増加などはないだろう」とされる薬は、あるにはあります。が、それが母体に対して優しいか、とか、効果が高いか、とかいう話ですと、別の話になってきます。
投薬治療を行わない形での治療ですと、カウンセリングなど心理療法による治療が検討できます。
ただし、当院は専門の心理職がおらず、また現状で雇用できる見通しも立っていません。そうした治療をお求めの方は、他院やカウンセリング機関などをご自身でお探しください。
通院中の方であれば、紹介状は作成できますが、カウンセリングに関しては自費になってしまう都合上、当院からご紹介は致しかねます。ご了承ください。
診療の際に医師に質問なさってください。その場で回答が100%ご用意できるかはわかりませんが、一緒に考えていけると思います。
男性の精子形成に関しては、添付文書上は記載がないものが多いです。平均的に1回の射精で億単位の精子が放出されるとされていますが、受精に至るのは基本的に、卵子1つにつき1個だけです。精子形成の段階で十分な運動性を持っていないものは、受精に至らず脱落します。
しかし、これは必ずしも男性起因での先天性障害がないということではありません。父系遺伝(父親と同じ遺伝病になること)があることからも、それは明らかです。やはり、心配なさる方は内服を控えていただく、ということが必要と考えます。
女性と違うところは、性交渉が終わったら、それ以降は内服しても胎児への影響はないという点です。(胎盤がないため)